有名人の英語ライフ!

英語力は表現の幅や活躍の場を広げていく上で重要なスキルのひとつです。このコーナーでは英語というツールを使ってチャレンジを続ける様々な著名人にインタビューし、英語にまつわる経験談や学習者の皆さんに向けたメッセージをご紹介します。

vol.9-1:桑田 真澄さん(野球投手)Masumi Kuwata as a Baseball Pitcher /英語も人生も、失敗してもいいんです。その失敗を、次に生かせばいいんだから。

<プロフィール>
1968年生まれ。大阪府出身。投手(右投右打)。
PL学園高校で1年生からエースとなり、5回連続甲子園出場(出場可能な最多回数)。そのうち4回は決勝に進み、2度の優勝と2度の準優勝を誇る。甲子園20勝という戦後最多記録を持ち、打者としても6本塁打は史上2位(1位は同期のチームメイト清原和博選手)。
1986年、ドラフト1位で巨人に入団。2年目の1987年には15勝をあげ、最優秀防御率のタイトルと沢村賞を獲得。以来、6年連続2ケタ勝利をあげるなど巨人のエースとして活躍。1994年には最多奪三振王と年間MVPを獲得。
2006年終了後、巨人を退団。メジャーリーグ挑戦のため、アメリカのナショナル・リーグの名門ピッツバーグ・パイレーツとマイナー契約。メジャー昇格を目前に控えた3月の最終登板で、試合中に球審と激突。右足首のじん帯2本断裂というアクシデントに見舞われるが、リハビリに専念し、6月には39歳でついにメジャー昇格を果たす。
シーズン途中の8月、調子を崩して退団。2007年内に足首の手術・リハビリを行い、2008年1月、パイレーツと再びマイナー契約を結ぶ。シーズン本番でのメジャー復活を目指し、挑戦を続けている。
※インタビューは2007年11月末に行ったものです。
公式ブログ : http://sports.nifty.com/kuwata-masumi/

メジャーへの挑戦、怪我、復活…。
いろんなことがあるからこそ、自分が磨かれる。

2007年は僕にとって大きな年でした。目標だったメジャーリーグへの挑戦も果たし、途中、「右足首じん帯断裂」という大怪我もありました。でも、“試練が人を磨く”と信じていますし、実際に「もう無理だろう」と言われる状態からメジャーに昇格できた。だからこそ喜びも倍増だったし、その感動は得難いものになりました。その後も手術とリハビリを行いながら、まだまだ挑戦を続けていますが、これからも常にポジティブに考えていきたいと思っています。

英語に関しても、初めてアメリカで1年間生活し、通訳なしでいろんなコミュニケーションを実践した年でもありました。実際にアメリカで生活してみて分かったのですが、日常生活は中学3年間の英語で十分ですね。考えてみれば、日本語でも普段使う言葉は限られているじゃないですか。英語も同じなんですよね。僕は使う機会が多い言葉から順に整理して覚えていくようにしていました。そうはいっても、契約などの場面では難しい言葉がたくさん登場します。僕はそれを全部書いて残しました。ときには「今の発音をもう一回お願いします。スペルは?」と聞いたりしてね。そして、家に帰ってから調べるんです。スペルを推測しながら電子辞書に入れていって、音声ボタンを押して発音を聞く。「そうそう、これこれ」と、毎日この繰り返しでした。

僕自身もともと失敗を恐れないタイプですね。例えば、日本語でも100人いれば100通りの話し方があるように、英語も自分なりの話し方でいいんじゃないかと。それに、野球でもイチロー君でさえ4割5割は打てない、6割以上失敗するわけです。人生もそうだと思うんですよ。失敗してもいい。大事なのは、そこから起き上がることだと。英語だって、ある場面で分からなくても、辞書を引いて「なるほど」と納得すれば、別の場面では使えるようになるわけですから。

どんなことでも、基本をしっかりやって、ずっと頑張っていればある日突然できるようになると思うんですよ。野球でもずっと練習して「できない、できない、ダメかな」と思っていると、ある日突然できたりする。英語についてもそう思って取り組んでいます。今はまだ、パッと英語で判断してパッと英語を使う、というところまではいかないけど、早くそうなりたいですね。

人と分かり合い、人生を豊かにするための3つのライフワーク。

僕自身の考えの中に、「豊かな人生には、ひとつのスポーツ、ひとつの音楽(楽器)、ひとつの語学が必要だ」という、ライフワークの指針のようなものがあるんです。これらはすべて、コミュニケーションのきっかけであり、コミュニケーションそのものでもあるんですね。僕にとってスポーツとはもちろん野球、音楽というのは実はピアノを弾くことなんです。(この二つがあれば、)フランス語ができなくても、野球ができるフランス人、ピアノが弾けるフランス人とは何らかのコミュニケーションをとることができるんです。そして、3つめの語学というのは、もっと深いコミュニケーションのために必要なものです。僕にとって必要な語学は、英語です。英語を話す人は世界中にたくさんいますから、一番世界が広がる言葉だと考えています。

誰かと出会って自分の思いが伝わる、相手の気持ちが分かるというのは、それだけで嬉しい。また、人と出会って予想もしなかった道が開けたり、時には困難にも遭いますが、そういう中で自分が磨かれていくわけです。人と出会うということは、人間力を磨くことの原点ですよね。山にこもってやる修行なんか実はそれほど大したことはなくて、人と触れ合うことこそが大切だと、僕は感じています。人種や国境を越えて人間はひとつ、みんな同じだという意識があるからこそ、できるだけたくさんの人たちとコミュニケーションをとっていきたいと感じるんです。その可能性を広げてくれるのが、スポーツであり、音楽であり、語学だと。そんな考えがあったので、英語の学習についても、だいぶ前から関心があって、少しずつ取り組んできていたんです。

日本人はもっと自分の英語に自信を持っていい。
だけど大切なのは国語力であり、生きる姿勢。

プロ野球選手って、実は日本でも英語を勉強できる環境にいるんですよ。だいたいどのチームにも1人か2人は外国人選手がいますよね。僕は彼らが孤立しないよう助けてあげたいという気持ちと、自分の英語が通じるのかという好奇心もあって、巨人時代は彼らに積極的に話しかけていました。クロマティとかガリクソンとかね。だんだん仲良くなって、メジャーリーグの話をしたりしながら「この表現はどう?」「この英語はこれでいいの?」などと話していましたね。たまにベネズエラとかドミニカなどから来る選手もいて、彼らより僕の方がちゃんと英語を話せると、それが自信になったりね。

昨シーズンにいたアメリカのチームの連中もね、結構いいかげんな文法を使って話していることがありましたよ。スペルも適当で、逆に僕にスペルを聞いてくることもあるぐらいでしたから。そういう意味では、日本人はもっと自信を持っていいんだなと思いましたね。日本人のほうが、基本はよほどしっかりしてますよ。ただですね、今回アメリカで暮らしてみて、改めて必要性を感じたのは「国語力」ですね。まず、“何を話すか”が問題です。自分の考えとか意見とか、しっかりしたものを持っていなければ、英語力があっても全く意味がないわけです。僕自身、英語の壁を感じた場面では、国語力が足りなかったと思っています。英語を勉強する以前に母国語をしっかりやらなければ、表現力も豊かにならないなと感じたんです。

もうひとつ、一見矛盾するように聞こえるかもしれませんが、人間何を言ったかというより、「生きる姿勢」を僕は問題にしたいですね。いくらかっこいいことを言っても、その人が生きている姿勢こそが大事だと思うんです。僕は僕なりの野球に対する姿勢を、パイレーツでもずっと貫いてきた。そうすると、言葉が十分でなくても、やっぱり伝わるものは伝わるんですよ。

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